田舎でオール公立でも最高の教育を目指す

地方で子育てをする医学博士夫婦の教育論

まだ無い答えを探す喜び

私は今、英語の論文を書いています。

おそらくこれが、研究者としての最後の論文になると思います。

開業したら…論文を書くことはできても動物実験や細胞培養などはできないでしょうから、

これが国際誌に発表する最後の論文になるかもしれないと思うと、感慨深いものがあります。

私の研究テーマはざっくりといえば「再生医療」です。

iPS細胞に代表されるように、流行りというか、とても面白くて人気のあるテーマなので、世界の中でも盛り上がっている分野のひとつです。


私が子供たちに伝えたいのは、

今は答えのある勉強ばかりしていて、つまらなく感じることもあるかもしれないけれど、

それはいつか「まだ答えの無い問題」に向き合うための布石だよ、という事です。

たとえそれがどんなに小さな事だとしても、世界の誰も、まだ答えを知らない問題に取り組むことが、どれほど面白いか。

自分がそれに1番最初にたどり着くかもしれないということが、どんなにワクワクすることか。

ただしそこにたどり着くためには、「もうすでに答えのあること(学校の勉強)」はクリアしていかなければなりません。

すでにある答えを掻き集めて、積み上げていって初めて、「まだ答えのない事は何か?」が見えてくるのですから。

学びの究極の目的は、「まだ無い答えを探しに行くこと」ではないかと思います。

ちょっとカッコつけてしまいました。笑


どんな仕事でも、答えの無い事に取り組むことは、大変だけど面白いものです。

私は、患者さんと向き合って接することも好きですが、

研究をする事がとても好きでした。

何の先入観も持たずに、子供に返ったような気持ちで結果を見つめ、

頭の中で様々な仮説を立てて夢を描く時間は、本当に至福の時でした。

そして研究はまた、手術とは違って唯一失敗が許される世界でもありました。

というか、「8割以上が失敗」という世界でした。笑

半年経っても何の成果も出ないという事もしょっちゅうで、

研究費に限りがある以上、結果を求められる厳しい世界でもあったけれど、

こんな大人になってまで、豪快に失敗して頭を抱えることができるのは、本当に貴重な経験でした。

本当にバカみたいな失敗もたくさんあって、

何かが化学反応を起こして燃えたり爆発したり、

やっとの思いで譲り受けた貴重な細胞を一晩で全滅させたり、

実験動物に逃げられて、実験を中断して一日中追いかけたり、

振り返ると、涙が出るくらい楽しかったです。


もし、そういう未来が想像できたら、今つまらないと思う学校の勉強も、少しは将来と有機的な繋がりを持ったものだと感じる事ができるのではないかと思います。

そういう私は、誰もそんな事を教えてくれる大人はいなかったので、全く想像できないまま大人になりましたが。笑


この世の中は、先人たちが見つけ出した「一見役に立たないもの」=「ガラクタ」で溢れています。

しかし、それを後世の人々が見つめ直し、それらを修正し、また、新たな発想でいくつか組み合わせる事で「役に立つもの」「意味のあるもの」に変化させてきました。

だから、今すぐ役に立つものではないとしても、まだ無い答えを探す事には意味があるし、一見つまらないものにもちゃんと意味があるのです。

現代人は便利な生活に慣れているので、すぐに役立つ物だけを求めがちです。

生徒達ですら、(過去の私もそうでしたが)学校の勉強など実生活にまったく役に立たない、つまらない、と批判して、座学をバカにしたりします。

でもね、それは、君が、それらに意味を見出し、発展させることができるレベルに到達していないからそう感じるのであって、実際は、今この瞬間も、それらの恩恵をたくさん受けて生活しているのだよ。

それに、君がつまらないと感じている、数学の公式や定理も、歴史も、小説も、科学も、

過去の誰かが、人生をかけて取り組んで、向き合って、未来へと残してくれたものなんだよね。

その人生を想像するだけで、たった一行の公式や定理が壮大なドラマになるのだけれど、それを子供たちに今すぐ理解しろという方が、無理があるのかもしれません。笑

でも私は子供たちに、その域まで到達して欲しいな、と思います。

ガラクタを組み合わせて、新しい物を創造して欲しい、まだ無い答えを探しに行く人になって欲しいです。


そして、私の行ってきた研究も、今すぐ治療に応用できるものにはならなかったけれど、こうやって論文として足あとを残しておくことで、

いつか、人類の幸せに役に立つものの、ほんのわずかなパーツの一部にでもなってくれたらいいなと願います。



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